PRPRの強化書

メディア(記者)が取材したくなる「オンライン記者会見」のコツ

新型コロナウイルス感染拡大の影響で記者会見を余儀なく中止され、「オンライン記者会見」に切り替える企業が増えたのが2020年3月。その後、4月7日に緊急事態宣言が発令され、企業の会見やイベントの開催にさらなる制限がかかる事態となりました。
このような大変な時期に新製品を発表したり、事業方針を発表したりということ自体ためらう企業も少なくないかもしれません。しかし、日本経済が落ち込んでいる今だからこそ、企業の経済活動を促進し、日本の企業の元気ぶりを発信するべきではないでしょうか。

そこで今回、“コロナ禍”のもとでも工夫次第で開催が可能な「オンライン記者会見」に関して、改めて整理したいと思います。

■オンライン記者会見の流れ
オンライン記者会見は、
①企業がプレゼンテーションや説明の模様を動画(ライブまたは事前に撮影した動画、もしくはその併用)で配信
②質疑応答は、主にチャットで質問を受け付ける(ここで配信を一旦停止する場合あり)
③(配信を再開し、)登壇者や広報担当者が質問に回答する
というのが主な流れです。
事前に申し込みをしたメディア関係者のみに参加用URLが送られ、開始約5~10分前に接続して参加するパターンが一般的。通常の記者会見と同様、司会者の挨拶から始まり、担当者による説明が行われます。説明時には、画面に説明用資料が大きく映し出される場合や、資料と登壇者が交互に映し出される場合など様々で、それぞれキャプチャーを撮り記事用の写真素材にすることも可能です。
ローソンが行ったオンライン記者会見は、YouTubeで一般視聴者にも公開し、質問もメディアのみならず一般視聴者からも受け付けました。

■オンライン記者会見で用いられるツール
・Zoom:ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが提供するWeb会議サービス。利用者急増に伴い株価を大きく上昇させていましたが、セキュリティ問題が表面化し、4月に入ってから各社が会見での採用に慎重な姿勢を見せはじめています。
※Zoomは4月1日、今後90日間エンジニアリソースをセキュリティ向上に充てるため機能追加等の計画は一旦凍結し、セキュリティ対策に集中すると宣言しました。
・YouTube:最も馴染みのある動画配信サービスといえば「YouTube」ではないでしょうか。限定公開の設定ができるのはもちろん、一般公開とすることで不特定多数への配信も可能。メディア関係者に限定せず、より多くの一般ユーザーに会見を届けることができます。
・Microsoft Teams:Microsoftが提供するコミュニケーションツール。Office 365を使っている企業なら使用ライセンスがあり、追加費用なしでオンライン記者会見が開催可能です。
上記3つのツールの利用が多いなか、ほかにもWebexやGoogle Hangouts Meet、コクリポ、GoToMeetingなどのサービス、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSを活用する例もあり、どのツールを利用するかはやはりプロに相談することが大切です。

■質疑応答への対応
質疑応答は、一般の対面式会見同様リアルタイムに近い形で行おうと試行錯誤していますが、現状はチャットボックスに質問を書き込む方法が最も一般的で、どうしてもタイムラグが生じます。企業がメディアからの質問を一旦預かり、回答する質問を選ぶという手順を踏まざるを得ないからです。ライブ配信にも関わらず従来の記者会見の“ライブ感”が損なわれてしまうという、オンライン会見の笑えない欠点です。そのため、メディア向けのオンライン記者会見は、音声によって質疑応答を行うことを前提とし、取材者側のストレスを軽減してあげる気遣いが必要です。

■その他PR側がやるべき工夫
・音声チェック
オンライン記者会見開催前に、きちんと音声が届いているか、参加者(メディア)側に確認する必要があります。会見開始10分前から音楽を流す、開始前に数回に分けてメディアブリーフィングを実施するなど、PR会社側で音声チェックをしてもらう機会を提供します。

・資料の事前配布
オフラインの記者会見と同様に、オンライン記者会見でも、会見時に説明する報道資料は事前に共有します。おおよそ会見開始1時間前~遅くても10分前までには、参加メディアにプレスリリースやプレゼンテーション資料をメールにて配布しましょう。そのメールに参加URLを再掲すれば、メディア側が改めて参加URLの記載されたメールを探す手間を省くこともできます。

・写真素材の提供
オンライン記者会見には、現場の写真が撮れないというメディア側にとって非常に大きなデメリットがあります。会見中の画面のキャプチャーは可能ですが、登壇者の息づかいが伝わるようなリアルな写真を撮ることは難しいでしょう。そのため、PR会社側で会見に参加した担当者の写真や会場全体を押さえた写真を撮影し、参加したメディア関係者用に、会見終了後から一定期間アクセス可能なダウンロードサイトを用意する必要があります。そういった意味では、対面式の会見時と同様に、プロのカメラマンを手配するのが無難です。また、各メディアの掲載写真が被らないよう、できるだけたくさんの種類の写真を用意してあげると親切です。

・見逃し配信
参加が確認された記者に対して、会見後に録画データや音声データを提供する仕組みが必要です。参加している環境によって途中で通信回線が切れてしまったり、記者会見の開催が重なり途中退室せざるをえなかったりということも十分に考えられるからです。会見後、一定期間視聴が可能な「見逃し配信」の用意はマストと考えましょう。

■オンライン記者会見事例
・株式会社メルカリ
「Mercari Conference 2020」をオンラインで開催。パートナー企業を招待した記者発表会を予定していたが、「新型コロナウイルス感染症対策」を受け、開催数日前に急遽オンライン会見に変更。元々オンライン配信を併用する予定だったため、大きな追加対応なく開催可能であった。配信はVimeoを使用。

・Big Hit Entertainment
韓国の男性ヒップホップアイドルグループ「防弾少年団(BTS)」が、ニューアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』のリリースに伴うグローバル記者会見を開催。新型コロナウイルスの拡散を予防するため記者不在の会場での実施となり、事前に世界中の記者から集めた質問に答える様子がYouTubeを通じて生配信された。

・株式会社ローソン
“食塩・化学調味料不使用”の新商品「玄米のダールカレー(レンズ豆)&ココナッツチキンカレー」発売記者発表会を実施。新商品を監修した松嶋啓介シェフが、フランスからビデオ通話で参加。YouTubeのローソン公式チャンネルでライブ配信し、質問はメディアだけでなく一般視聴者からも受け付けた。新商品のサンプルを、記者発表会場とローソン本社で配布した。

・株式会社NTTドコモ/ソフトバンクグループ株式会社/KDDI株式会社
各社「5G新商品・新サービス発表会」をオンラインで開催。YouTubeだけでなく、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSでも同時配信された。

■新型コロナウイルス収束後の対応
新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、ワクチンや治療薬が開発されていなければ、当面「3密」に該当するイベントの自粛が求められることは容易に想像がつきます。自粛が求められているとはいえ、プレスリリース配信のみで終わらせてしまっては機会損失を招きかねません。リリースだけでは、どうしても伝わらないことが多々あります。企業は機会損失を防ぐためにも、オンライン記者会見という「場」を設け、メディアとコミュニケーションをとることが非常に重要です。
少人数でのイベントの開催が解禁された折りには、オンライン記者会見とリアルイベントを組み合わせた「ハイブリッド開催」がおすすめです。例えば、新製品発表会、ホテルや商業施設などの開業前内覧会、新サービス体験会など、製品や施設自体を見てもらったり実際にサービスを体験してもらったりしないと記事が書けないケースはたくさんあります。あるいは、オンライン記者会見では質問が出にくいこともあり、活発な質疑応答のために専用の会場を設けるのもよいでしょう。数回にセッションを分けて行うという対策をとることで、少人数でのリアルイベント開催は十分に可能です。

対面型イベントを自粛せざるを得ないからといって、発表会自体を諦めてプレスリリースのみでメディアへ告知すれば、伝達力は弱くなります。メディア(記者)は、取材をして初めてテレビや誌面、Webのコンテンツ化に取り組むもの。オンライン記者会見も、この機会に準備に取り掛かることをお勧めします。

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