戦略PRをどのように実行するかは、いかにして人を説得できるかに尽きます。
膨大に溢れる情報の渦の中で、あなたが発信したい情報が一番だと、より多くの人に説得できるかに成否がかかっています。
ここで重要なのは、どのような順番で情報を拡散して空気づくりをしていくかです。
① 個人(自分)に関連すること
② 自分と連帯する人々(仲間)に関連すること
③ 仲間の集合体としての社会に関連すること
最初は自分の気持ちが大事だけれど、一人は嫌で仲間と一緒にいたくなり、それが共感される社会の中で心地よく暮らしたいと考えるのが、人間の基本的心理でしょう。
これを前提として、戦略PRの手順を整理していきます。
戦略PRでは、情報を受け入れてもらうためには第三者的発信が何よりも大事です。
具体的にどのようにすればよいかについては、戦略PRの提唱者である本田哲也氏はピジョンがベビーカー市場で後れをとったにも関わらず、形成を逆転させた際の施策を著書で紹介していますので、その手法について簡単に見ていきます。
a)PRの目的のためにどのような世論が必要なのかを明確にする
PRの目的・・・ベビーカーを競合他社よりもたくさん売りたい
必要な世論・・・市場を先行する競合他社がすでに築いた「よいベビーカー」の概念以上に共感を呼ぶ「よいベビーカーの新しい定義」
※従来は「よいベビーカーは軽くてファッショナブル」の概念を「直径が太いタイヤ」だと世論を転換させる戦略PRを施行した
b)世論を仕掛けるターゲットの明確化と調査
PRのターゲット・・・ベビーカーの利用者=母親
※ピジョンは乳幼児のいる母親たちにアンケートを実施してベビーカー使用時の不満と買う際の動機等のデータから「不満=小さな段差でもベビーカーを押し進めづらい」ので「新しいよいベビーカーの条件=直径が太いタイヤのベビーカー」の世論づくりに漕ぎつけ、PRを成功させた
c)情報を連鎖させるメディア選び
1. データで「小さな段差が生むベビーカーの危険性」を訴求し、「直径が太いタイヤのベビーカーは安全」だというインパクトを、新聞の社会面や新製品特集で露出して、世論を大きくする→「ベビーカーを買う理由が変化する」
2. CMにママさんタレントを使い、ベビーカーの段差問題を並行して訴求。動画メディア制作をはじめSNSも活用し、ネット上でも共感を得る。実際にベビーカーを使用できる試用会の開催ほか視覚的に「太い直径のタイヤのベビーカーは安全」をアピール
情報はさまざまなメディアを掛け合わせて価値が高くなるものです。ピジョンの場合は「ベビーカーの安全性は直径の太いタイヤにあり」を携えて、視覚的にベビーカーの安全性を世間に見せつけて、共感を呼びました。新聞が社会問題として大きく取り上げ、ピジョンが用意した動画メディアやCMで「直径が太いタイヤは安全」ということが裏付けられました。
ピジョンのベビーカーの商品名以前に「直径が太いタイヤのベビーカーは安全」という世論がSNS等で盛り上がり、テレビにも伝搬し、連鎖的に「売れる空気」が盤石なものとなったのです。