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【戦略PR】トレンドをつくるために必要なPR要素

戦略PRとは、「なぜ、今この商材が必要か?」「今買うべき理由があるからこの商材!」と、消費者の間に“商材に対する好意的なムード(雰囲気)”を作り上げて、評価や認知を向上させるPR手段です。単に商材名を連呼するだけではなく、商材が優秀である理由をまず世の中に刷り込み、トレンド化します。その結果、商材はライバルとは差別化された「選ばれた一品」へと成長を遂げるのです。

1. 戦略PRとは?

1.  戦略PRとは? のイメージ
「戦略PR」は、PRの手法のひとつです。
「PR」とは自らの情報を社会に発信し、多くの人々から共感を得るための活動。
PRの手法としては、プレスリリース等で商品名やその特長をメディアに売り込んで取り上げてもらい、認知を高めていく……というのが基本です。

それに対して「戦略PR」では、発信したい商品名や特長をメディアに売り込む前に「なぜその情報が社会に必要なのか」と問題提起します。データや資料などを基に「情報が社会に求められている」空気づくりや土壌づくりをしたうえで、「商品名や特長などの具体的な内容」を提示します。

発信したい情報がいかに社会から待望されているか、情報発信元ではなく、第三者の声を通して訴求していくので説得力が高まります。共感の輪が大きくなる手法です。
「売れる空気をつくる」が、戦略PRです。

2. 戦略PRが注目される理由と、強み

2.  戦略PRが注目される理由と、強みのイメージ
a)最適な情報を簡単に選べない時代に、「選ぶ価値」を補足
戦略PRが注目されるようになったのは、情報源の多様化により「どれを選択すべきか」が難しい時代になったためです。

一昔前は情報源といえば、テレビや新聞をはじめとするメディアのコンテンツと広告程度のものでした。それがPCやスマートフォンの普及によってfacebookやInstagramといったSNSが勢いをつけ、従来は井戸端会議で終わっていた個人が発信する情報が世界中を駆け巡るようになり、マスコミに肉薄する威力を備えていきます。氾濫する情報に、消費者はどれが自分に最適なのかわからなくなっていきます。
CM等の広告の効果も希薄化の傾向を辿りました。

そこで発信したい情報単体ではなく、その周辺の状況も巻き込んで価値を問う「戦略PR」が重要視されるようになったのです。

「戦略PR」はPRプランナーの本田哲也氏がアメリカでその威力を体感し、2009年に同氏の著書『戦略PR ―空気をつくる。世論で売る。』(アスキー・メディアワークス)を通して日本でも広まりました。同書が出て間もなく東日本大震災が発生し、SNSはまさに説得力をもって存在感を増し、「戦略PR」にも注目率が高まっていきます。

b)どんどんコントロールできなくなる情報を、最適化
SNSの台頭は、情報洪水を引き起こしただけではありません。
テレビやラジオには番組表があり、新聞や雑誌にも決められた発売日があります。ところが、SNSは発信にも受信にもタイムスケジュールはありません。
また、発信者の素性は事実上問われないSNSでは情報の真偽に関する保証はありません。それにもかかわらず、素性は不明でも個の意見が歓迎され、広告的なコンテンツは避けられがちになる現象すら起きています。

情報量が膨大化しただけではなく、その真偽の判断すら個人に委ねられる時代となり、どれが自分にマッチするのか選べなくなってきています。

だからこそ、「この情報こそがあなたに最適」という裏付けをもって寄り添ってくる「戦略PR」は、効果絶大なのです。

c)情報洪水が進行させたパーソナライズ化を逆手にとる
入って来る情報が増え、選択肢が広がったことで、個々の嗜好も多様化しています。
広告もPRも一筋縄では効果が出なくなっています。
それでも人間は孤立よりも連帯を好みます。この習性を利用して、発信したい情報を「戦略PR」によって「社会の主流となる嗜好」に変身させればよいのです。
たとえば、かつては「輝く白さ」だった洗剤の売り文句も、コロナ禍の現在では「除菌」「脱臭」に変遷しています。

3. 戦略PRの手法、手順

3.  戦略PRの手法、手順のイメージ
戦略PRをどのように実行するかは、いかにして人を説得できるかに尽きます。
膨大に溢れる情報の渦の中で、あなたが発信したい情報が一番だと、より多くの人に説得できるかに成否がかかっています。
ここで重要なのは、どのような順番で情報を拡散して空気づくりをしていくかです。

① 個人(自分)に関連すること
② 自分と連帯する人々(仲間)に関連すること 
③ 仲間の集合体としての社会に関連すること

最初は自分の気持ちが大事だけれど、一人は嫌で仲間と一緒にいたくなり、それが共感される社会の中で心地よく暮らしたいと考えるのが、人間の基本的心理でしょう。
これを前提として、戦略PRの手順を整理していきます。


戦略PRでは、情報を受け入れてもらうためには第三者的発信が何よりも大事です。
具体的にどのようにすればよいかについては、戦略PRの提唱者である本田哲也氏はピジョンがベビーカー市場で後れをとったにも関わらず、形成を逆転させた際の施策を著書で紹介していますので、その手法について簡単に見ていきます。


a)PRの目的のためにどのような世論が必要なのかを明確にする
PRの目的・・・ベビーカーを競合他社よりもたくさん売りたい
必要な世論・・・市場を先行する競合他社がすでに築いた「よいベビーカー」の概念以上に共感を呼ぶ「よいベビーカーの新しい定義」
※従来は「よいベビーカーは軽くてファッショナブル」の概念を「直径が太いタイヤ」だと世論を転換させる戦略PRを施行した

b)世論を仕掛けるターゲットの明確化と調査
PRのターゲット・・・ベビーカーの利用者=母親
※ピジョンは乳幼児のいる母親たちにアンケートを実施してベビーカー使用時の不満と買う際の動機等のデータから「不満=小さな段差でもベビーカーを押し進めづらい」ので「新しいよいベビーカーの条件=直径が太いタイヤのベビーカー」の世論づくりに漕ぎつけ、PRを成功させた

c)情報を連鎖させるメディア選び
1. データで「小さな段差が生むベビーカーの危険性」を訴求し、「直径が太いタイヤのベビーカーは安全」だというインパクトを、新聞の社会面や新製品特集で露出して、世論を大きくする→「ベビーカーを買う理由が変化する」

2. CMにママさんタレントを使い、ベビーカーの段差問題を並行して訴求。動画メディア制作をはじめSNSも活用し、ネット上でも共感を得る。実際にベビーカーを使用できる試用会の開催ほか視覚的に「太い直径のタイヤのベビーカーは安全」をアピール

情報はさまざまなメディアを掛け合わせて価値が高くなるものです。ピジョンの場合は「ベビーカーの安全性は直径の太いタイヤにあり」を携えて、視覚的にベビーカーの安全性を世間に見せつけて、共感を呼びました。新聞が社会問題として大きく取り上げ、ピジョンが用意した動画メディアやCMで「直径が太いタイヤは安全」ということが裏付けられました。

ピジョンのベビーカーの商品名以前に「直径が太いタイヤのベビーカーは安全」という世論がSNS等で盛り上がり、テレビにも伝搬し、連鎖的に「売れる空気」が盤石なものとなったのです。

4. 第三者の声が大事、だからテレビは効果的

4.  第三者の声が大事、だからテレビは効果的のイメージ
戦略PRの「空気づくり」は、情報が社会をまんべんなく駆け巡るほど連鎖していくことで成果を上げます。

新聞、雑誌、SNS等メディアはさまざまありますが、テレビに取り上げられたタイミングを機に、一気に情報が巨大化していくケースが少なくありません。テレビで報道されて、世論がブームに変貌します。

ピジョンの場合は、同社が調査データや実験データとともに投げかけた問題提起で新聞が社会問題として食いつき、利用者である母親層が振り向き、商品紹介系メディアが興味を示し、平行してSNSでざわつき、テレビが取り上げた頃にはすっかり「ベビーカーは軽くてファッショナブルなだけではなく、安全でないと!」という空気が出来上がっていました。

このように、「売れる空気をつくる」戦略PRは、常に発信したい情報の周辺を俯瞰して、状況に応じてメディアに「なぜ必要なのか」を問いかけ、答えを用意して仕掛け、第三者の声としてメディアに露出する施策です。

「戦略PR」は一見、仕掛けが大掛かりになるイメージですが、「〇〇成分が体に健康によい」という脈絡をテレビでアピールするだけで世の中の空気を大きく変えてしまうことも少なくありません。もちろん、そんな場合でも、問題提起、ファクトデータの提示、第三者(専門家や有識者)からの情報発信などを前提に戦略をプランニングする必要があります。仕掛けの大小を問わず、それなりの経験値が必要な手法だとはいえます。「普遍的なテーマ」、「唯一無二の商品」、「シェアトップの企業」といった条件に該当する商材のPRにはかなり効果的です。

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