BtoB企業の広報・PRは経営戦略に紐づいたものであるべきですが、具体的な戦略や手法に関する考え方の基本はBtoC企業と変わりません。
ステップを踏んで、広報・PRの戦略や手法を見ていきます。
1)広報・PRの目的を明確にする
売上向上や営業支援のために認知度を上げたいのか、採用を有利に進めたいのか、海外拠点強化のためのグローバル化のためか、社員の士気を高めたい等、目的を明確にします。
また、オプションとしてBtoB企業では予期せぬ危機管理対策としての広報・PRも日常的に対応トレーニングを欠かさないようにしましょう。
2)広報・PRの対象者や地域を設定する
1)で設定した広報・PRの目的に沿って重点を置くターゲット層や地域を定めます。売上向上を主眼とするなら現在後れをとっている商圏を重視するのか、定着した商圏を充実させるのかを考慮します。ターゲット(対象者)は取引先候補、採用目的の広報・PRであれば学生や期待する年齢層、さらに通勤可能な地域在住者といったように絞り込んでいきます。
3)広報・PR活動の時期を設定する
売上向上等営業面に反映させたい広報・PRであれば新製品発売のタイミングか、売上が落ち込む時期か等に合わせて活動の時期を設定します。採用目的ならば学生が志望先を意識し始める時期を中心に活動予定を立てるとよいでしょう。
4)手法を検討する
1)~3)が決まったら、次は手法を考えます。目的別にどのような手法があるのか整理してみます。
◆認知度向上のために
・企業(または社長等の経営陣)紹介シートの作成
・メディアが報道したくなるような企画書の作成
(プレスリリース的な内容ではないことがポイント。導入事例や自社が置かれた市場のトピックスを横断的な視点でまとめる等)
・自慢できる社内の取り組みを整理した報道ファイルの作成 (教育制度、福利厚生、採用、行事等)
・企業あるいは経営陣等が市場をリードする専門家だと位置づけられるような連載
・社長や看板社員の取材獲得
・調査PR(事業内容に関連した調査で得た数値をニュースネタとして利用)
・書籍出版
BtoBの場合、事業内容、商材の内容がわかりづらい場合が少なくありません。プロ同士の取引だとしても、質の判断を下しにくいことも多いでしょう。ひたすら社名を覚えてもらって営業活動に優位性をもたせたいのか、自社のよさをじっくりと理解してもらいたいのかによって手法を検討します。
◆採用(リクルーティング)のために
採用サイトの充実
学生の読者が多い媒体(Webや雑誌等)で社風が伝わるような連載
新人入社後の生活がわかるような動画作成
学生課向け企業紹介冊子の作成
どのようなメディアに取り上げられることが取引先拡大、売上増に結び付くのかを考え、「ターゲットメディアに好かれる、ニュースになるストーリー」を仕立て、企業のブランド力向上に貢献します。
◆グローバル化促進のために
英語サイトの充実
海外通信社向けにプレスリリースを出す
英語版会社案内の制作
社名あるいは、海外対応部署の英語版名称(愛称)を検討
◆社員の士気向上のために
社内報(Webでも紙でも可)発行
社内イベント開催(ZOOM等のオンラインも可)
社内コンペ開催(社是の募集、写真コンテスト、部署ポスター作り等)
経営者と一般社員、異なる部署の交流の場の設定(ZOOM等のオンラインも可)
著名人を採用したイベント開催、CM投下等B2B企業のイメージを脱却するようなコンシュマー向け広報・PRの展開
◆危機管理のために
不祥事や事件発生時に備えた説明会見の訓練
詫び状の事前準備
釈明文をまとめたプレスリリースの用意と対象メディアリストの作成
問題発生時の情報伝達系統を事前に設定し、関係者の発言を統一化
BtoB企業は、信頼関係で事業が成り立っていると言っても過言ではありません。商材に不備が発生したり、工場で事故があるとそのまま業績に響きます。危機管理広報は、いつでも対応できるように日頃から準備がたいせつです。