■情報取引と商取引
PRも広告も、商品やサービス、場合によっては人物やイベントを広く世間に知らしめ、興味を抱いてもらおうという行為です。つまり、PR活動も広告活動も目的は同じです。
しかし、目的に至るまでの手法が違います。
基本的にPRは情報をメディアに提供して掲載、あるいは放映してもらいます。メディアに渡すのは情報だけでお金は発生しません。広告は、メディアに扱ってもらうために、掲載紙誌面、放映時間(CM)、Webのスペースを「枠」として買い、そこに情報を流すのです。
いうなれば、PRは情報を「いかに価値があるか」で取引し、広告は情報を「お金」で商取引するものなのです。
今どき広告にお金がかからないと思っている人はいないでしょうから、お金が絡んでいない分、PRによって流される情報は広告より信頼性がありそうだと思われがちです。
ところが、「無料だし信頼性が高まるならPRのほうが広告より価値は上」とは一概には言えません。情報元となる企業にしてみれば、最終的なゴールは「より多く売りたい」「より有名になりたい」です。このゴールへの近道は、結局広告ということも少なくありません。
■PRの情報は客観視され、広告の情報は主観的に見える
PRは、広報担当者がメディアに対して「これは多くの人が興味を惹く話題です」「これは貴メディアの視聴者(読者)にとって価値の高い情報です」と説明し、メディア担当者に賛同してもらうことにより報道されていきます。ただし、どのような報道になるかはメディア次第です。広報担当者が「前向きな印象になるように」だとか「デザインよりも効能を中心に伝えてほしい」と考えていても、思い通りにメディアの報道をコントロールすることはできません。それだけに客観的な視点で発信された情報だと、受け取る側に感じてもらえます。
そもそも、PRはメディアに扱ってもらえるように仕掛けるところから仕事が始まります。扱う気にさせ、しかも思い通りの方向で報道してもらえるように説明の仕方や企画書に気を配らなければなりません。PRは広報戦略が勝負の鍵なのです。
広告の場合は、法律にふれない内容でさえあれば買った枠に応じて、情報発信側の思う通りにメディアに載せることができます。その分、情報は主観的に捉えられます。
また、広告はメディアへの掲載については「枠を買う」ことで終わりますが、世間に興味を抱いてもらえるかどうかは枠にはめる広告の内容次第です。
結局PRにしろ広告にしろ、受け手に「情報がどのように感じ取られるか」が成否の分け目です。PRは情報をメディアに提供する段階のストーリー、広告は枠に載せる内容のストーリーが肝心です。戦略の立て方が鍵というところは同じです。PRも広告も、パートナーと組んで運用するなら、その点が優れているかどうかを主眼に置いて見極めてください。
PR活動を企業に代わって行うのはPR会社で、広告枠の選定やバイイング(広告枠を買うこと)、広告内容の制作を代行するのは広告代理店です。
日本では広告代理店がどんな会社なのかはピンと来る方が多いようですが、PR会社についてはまだまだ認知度が低いようです。しかし、蛇足ですが、アメリカでは広告市場よりもPR市場のほうが優勢です。PRはアメリカの大統領選から誕生した文化だとも言われ、事実オバマ氏が「CHANGE!」、トランプ氏が「America First」のキャッチフレーズで勝利したと毎回世界中で話題になります。誰が選ばれたかだけでなく、立候補者の政治の考え方、方針、掲げる政策までが世界中にとどろくのです。いかにそれらに納得し、賛同する人を多く集められるかで、選挙の勝敗は決まります。選挙は世論づくりで勝負が決まる……これこそ究極のPR。
世論づくりのPR市場が今後どのように盛り上がっていくのか、注目する価値はあると私たちは考えています。