PR NewsPRニュース

PRやマーケティングのヒントが満載。高額なのに売れるアップル製品 2023/07/04

今年は毎月のように値上げが発表され、家計を脅かします。競業との兼ね合いから資材や輸送費が値上がりしようとも簡単に値上げできずに耐え忍ぶ企業も少なくありません。

こんな時代に業績を伸ばし続けているのが、意外にも「元々値段が高い」ハイブランド市場です。
代表格は、エルメスやルイ・ヴィトンで、バッグや財布が数十万円、下手をすると百万円超えという値付けです。外出の機会が減ったコロナ禍にあっても売上を伸ばし続けました。
ハイブランド品のように販売される価格が高いほど需要が増し、売上が伸びる効果を「ウェブレン効果」と言い、経済学的にも立証されている現象です。
ウェブレン効果:Wikiペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%B3%E8%B2%A1

とはいえ、長い歴史の中で培ったブランドにより導き出される「高くても人気」「高価だからこそ得られる優越感、満足感」は、一朝一夕に真似できるものではないでしょう。

しかし、もっと歴史が浅いにも関わらず、「高値なのに売れる、人気」という製品を発売し続けている企業があります。それが、アップルです。

■ブランド調査で常にトップを走る、アップル

アップルの社歴は、1976年創業と50年にもなりません。最初からコンピュータ専門の会社として誕生しています。しかし、着実にブランドを築き上げています。

日経リサーチが毎年発表しているブランド戦略サーベイでは、なんと4年連続でアップルがトップを走っているのです。
・ブランド戦略サーベイ 2022総合評価ランキング
※国内最大規模のコーポレートブランド調査データベース
https://service.nikkei-r.co.jp/service/bss/brand-ranking

このほか米フォーブス誌によるThe Top 100 Most Valuable Brandsでも何度もトップの座に就いています。
https://www.visualcapitalist.com/top-100-most-valuable-brands-in-2022/

売上に関しては、2022年度通期の日本におけるメーカー別総出荷台数シェアはアップルがトップで、12年連続で1位を獲得しているとICT市場専門のリサーチ・コンサルティングの草分けであるMM総研が発表しています。

https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=576

スマートフォンの価格としては、アンドロイド製の端末は機能にもよりますが1万円前後から十万円超するものまでさまざまです。大半の方々は数万円で購入している模様です。ところが、アップルのスマートフォン・iPhoneとなると、十万円超での購入は珍しくありません。これは発表当時から変わらない傾向です。

生活必需品とも言えるスマートフォンですから、機能面では基本的に通話・メール・写真撮影ができれば、あとは好みの問題とも言える分野です。むしろ値段は安いほうがいいとされる製品分野だとも考えられます。

そんな市場で、高価なアップル製品が高いシェアを占めているのです。

■ハイブランド市場の戦略と重なる部分が多い、アップルのマーケティング

なぜ、アップル製品は高くても売れ続けるのでしょうか?
そこで、アップル社の戦略を改めて見直してみます。
同社に関してはマーケティングについても数々の書籍が出版されていますので、「アップル 戦略」で検索すれば数多くの結果が出てくるはずです。
それらを総括すると以下の3項目に集約されます。

①ライフスタイルをメッセージ性があるストーリーで提案し、展開する事業群

ITという市場は次々と私たちの生活を豊かにしてくれていますが、先端技術の結集ですから発表当初はその利便性や機能に関してとっつきにくく感じられがちです。
そこをアップルは、常に「生活の中でこれまで不便だったことが、こんなに改良される。しかもその先には夢のある世界が待っている」と働きかけるのです。
新製品の先に近未来の素敵なストーリーが展開することを示唆します。

ストーリーの説得力はPRの基本ですから、アップル製品に多くの人が親近感を感じる理由はPRを担当されている方なら想像しやすいと思います。

②シンプルだがスタイリッシュさや高級感を追求したデザインの重視
リンゴのマークに象徴されるアップルのロゴは継続的に利用されており、それだけで数々の製品を想起させるほど世界中で有名です。
パソコンや業務用のコンピュータの筐体にもデザイン性を重視し、常に他社製品と差別化を図り、スタイリッシュさを求めるアップル製品のファンの気持ちをくすぐり続けます。
ベージュやグレイの四角いプラスチックというイメージしかなかったパソコンのラインナップに、アップルは数十年前から家電品のようなブルーやピンクのパソコンを数々投入します。

➂機能や操作のわかりやすさ
コンピュータに対するイメージは、呪文のようなコマンドやプログラムの知識なしには使えないと怖がっていた人々に「ボタンひとつで使えますよ」とアプローチし、いち早くマウスやWindowsの機能を搭載したパソコンを個人用に発表しています。

「Think different」という1979年にアップル社が掲げたキャッチフレーズそのものである「発想を変えよ」を軸に、競合他社と差別化し、ブランドを築いてきたのです。

そしてアップルの戦略は、ハイブランドの象徴的存在のルイ・ヴィトンやグッチと酷似した点も多数あります。

ハイブランドは4Pと称されるProduct(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)を大事にし、基調としていると言われます。

ルイ・ヴィトンもグッチも戦時中に品不足な中でも、旅行用品に品格と品質を追求した製品を提供したことで他社との差別化に成功しました。これが彼らのProduct(製品)です。
アップルもいち早くマウスを搭載し、市場の大勢を占拠するマイクロソフト系とは一線を画したユーザーインターフェイスのPCで勝負しました。
そしてPrice(価格)に関してはハイブランド品もアップルも競合他社よりも、あえて高く設定しています。
極力全顧客に対して同じ価格で販売することを遵守し、セールを原則として行わない方針を貫くハイブランドと同様、アップルもセールを行うことは稀です。

Place(流通)に関しては、ハイブランド市場は直営店のみでの販売体制を堅持しています。アップルもアップルストアを筆頭に、量販店でも独特の専用コーナーを構える姿勢を貫いています。

最後のPromotion(プロモーション)ですが、ルイ・ヴィトンは当初広告をほとんど出さないことで、ブランドアイデンティティを守っていました。最近は女性誌や全国紙への出稿が目立ちますが、かつては広告よりもメディアや上客にフォーカスをあてて、季節の挨拶やクローズドなパーティーの開催に力を入れていました。
アップルも、PC雑誌に広告を出さない、新製品発表時にもメディアに先行で資料を提供せず、自前の発表会でのみ新情報を出すなど、独特の方針を貫いています。

歴史は長くなく、市場もITというハイブランド品とはかけ離れた分野ですが、「ユーザー(顧客)の気持ちに寄り添って、競合他社と差別化」するブランディングという点ではアップルの戦略は非常にヴィトンやグッチと近いと感じます。

どの分野の市場であれ、PRやマーケティングの基本は、顧客の気持ちに寄り添い、独自性を築き上げることではないでしょうか。

値上げの続く時代に「値上げしないで済む方法」を模索するだけでなく、「値上げしても勝てるブランディング」を模索するのも一考ではないでしょうか。
ブランディングに課題をおもちの方は、こちらまで。

ページトップ