ACジャパンは、あなどれない 2025/01/30
新年早々、今年は団塊世代が75歳以上となり後期高齢者人口がピークを迎えることへの懸念、それに加えて物価高や異例な量のTVCMをACジャパンによる公共広告に大量差し替えと、さわやかな話題がありません。そんな世情にめげず、当社は今年もPRに積極的に取り組み、ご相談いただくお客様に真摯に寄り添っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
さて、CM差し替え問題ですが、これはPRに携わる者にとっても基本的なことは押さえておきたい事項です。この件で最近知名度をグングン上げているACジャパンとは何かについては随所で論じられていますが、PR関係者の次善の策となるような部分を中心にまとめてみました。
ACジャパンは、実はなかなかあなどれない存在なのです。
なぜならば、同団体は大手広告主の集まりとも言えるからです。
では、その概要を見ていきます。
●ACジャパンhttps://www.ad-c.or.jp/とは
・誕生の経緯
最初の大阪万博開催翌年、当初関西公共広告機構という名で1971年に発足しています。
高度経済成長期に好景気に日本が浮かれ、景気が上昇する一方で公害問題や公共マナーの悪化、人間関係の希薄化などが表面化していった時期でした。こうした問題により起こる社会のひずみに悲観した当時サントリーの社長だった佐治敬三氏が「広告を通して状況を是正したい」という思いから、アメリカのAC(The Advertising Council https://www.adcouncil.org/)の活動を手本にACジャパン設立に乗り出したのです。
1974年には公共広告機構として認可され全国組織となり、2009年にACジャパンに名称変更し、ほぼ現在の体制が確立されました。現在の正式名は公益社団法人ACジャパンです。
●基本的な活動内容
活動内容は多岐にわたりますが、ひとまとめに表現すれば広告媒体を利用したCSRの活動によって社会の倫理や道徳を訴えていくことが軸になっています。
ACジャパンのCMがなんとなく道徳の教科書のような雰囲気になるのはこのためです。
毎年テーマを決め、それに沿ったキャンペーンが展開されています。
1) 公益的キャンペーンの実施
「公共マナー」「環境問題」「親子のコミュニケーション」「多様性」「ネットモラル」「災害」など、普遍的あるいは時代の世相を反映したテーマ、公共福祉活動に取り組んでいる団体を支援するキャンペーンを定常的に行います。
阪神淡路や東日本大震災等の大災害発生時の被災地の心も経済も守る活動、いじめや経済格差により生じる生活環境のひずみを是正する活動ほかと言えばなんとなく実感が沸くでしょうか。
2) 著しく特異な現象が発生した際にそれらを是正するキャンペーン
大震災等大きな災害時に、被災地を精神的または経済的に救済することを目的に寄付を募る告知等のキャンペーンを、広告媒体を利用して行います。
3) その他地域別、特定団体別等を対象としたキャンペーン
常に社会全般に目を向け、特異な被害があった等の問題以外でも公共的に考えて歴史的に課題を抱える地域への支援等。
こうしたCSRを目的とした数々のキャンペーンがACジャパンの活動のメインです。
なお、活動の中で特異な点としては、通例では高額な費用が発生すると想像されがちな広告出稿料はACジャパンに関しては発生しません。企業がすでに媒体社と契約を交わした後にさまざまな理由で広告原稿をACジャパンのものに差し替えた場合でも、ACジャパンから媒体社に支払行為は行われません。
これに関しては、もう少し詳しく後述します。
●どのように運営されているのか
ACジャパンの趣旨に賛同する企業が会員となり、基本的には会員の会費により運営されています。ここでいう運営というのは、ACジャパンの広告原稿の制作や活動の基本方針を決める打ち合わせ等にかかる費用を指します。
設立当初114社でスタートし、現在は1000を超える企業が参加しています。
年会費は正会員(法人)の場合1口12万円で何口でも申し込み可。
会費が安く、付与される施行権が少なくなる賛助会員や個人会員として加入することもできます。
●ACジャパンの会員になるメリット
ACジャパンの会員は公式サイトで公表されています。https://www.ad-c.or.jp/member/index.html会員になると、同団体の総会への参加が許され、議決権を行使することができるようになります。
さらに会報誌の送付ほか、さまざまな情報を得ることができます。そして、委員会活動への参加により、同団体の活動に直接的に関わることも可能です。
メリットをまとめると、主に2つが考えられます。
1)社会貢献に意欲的な企業としてのイメージの獲得
ACジャパンは すでにご紹介したようにCSRを軸として活動しているので、同団体の会員となることは、企業イメージ向上に繋がります。
ステークホルダー、 従業員、顧客、地域社会等との関係強化を見込むことができます。
2). 情報交換の機会の獲得
ACジャパンの会員は公式サイトで公表されています。
大量の広告出稿により知名度の高い、そうそうたる企業が名を連ねます。
つまり、ACジャパンは商工会議所に対するロータリークラブ的な企業同士の交流の場でもあるのです。
会費は必要ですが、ACジャパンの会員になることで広告業界の最新情報や動向をいち早くキャッチアップすることができます。ビジネスパートナーを見つける機会も得られます。
●非常時に契約済の広告がACジャパンに差し替えられる理由
震災等発生時にエンタメ性の強い広告を流すことが企業イメージにダメージを与えると判断された場合等、契約済みの広告枠をしばしばACジャパンの公共広告に差し替えられることがあります。これは基本的に運営資金に貢献する会員に限られる権利です。ただし、緊急事態ほか社会全体が共通の危機に直面している場合においては、非会員企業からの依頼も検討される可能性はあるとのことです。
また、先述のとおり差し替えの際の広告出稿料はACジャパンではなく、元の企業が支払います。
●媒体選定の要素
・ACジャパンの出稿媒体選択の基準
まず、ACジャパンが伝えたいメッセージのターゲット層を考慮し、訴求したい層に合わせて最適な媒体を選択します。たとえば、若年層に訴えかける内容の広告であれば、SNSや動画サイト、中高年層であれば新聞やテレビなど、それぞれ最もリーチしやすい媒体が選ばれます。
さらに、各媒体が持つ特性を最大限に活かせる媒体選定を行います。テレビは視覚と聴覚の両方に訴えかけることができ、年齢を問わず大衆に広く情報を伝達するのに適していると考え、雑誌は、特定の興味関心を持つ層にターゲットを絞って情報を発信するといったような判断とのことです。
・発行部数や影響力を考慮した媒体選び
媒体社へのスペース料の支払いがないACジャパンは、広告原稿の制作も同団体の会員が「無償」で行います。繰り返しますが、広告制作のプロが多数含まれている会員が「無償」で制作するのです。つまり各種媒体に流されるACジャパンの公共広告の原稿は、一般の有償の営利目的の広告原稿と質的に劣るものではありません。
ACジャパンの会員一覧を見れば一目瞭然ですが、大手広告クライアントのみならず、主要メディアや代理店も名を連ねます。
こうした人々が「このテーマには最適な媒体」とお墨付きでそれなりの内容の広告原稿を出稿してくれるのが、ACジャパンの広告なのです。
媒体責任者として、これを拒む理由はないのではないでしょうか。
●ACジャパン=広告主と捉えるのは無謀か?
改めて念を押しますが、ACジャパンはメディアへの広告出稿を無償で行える、つまり自らのメッセージを広く伝える手段を持っている団体だということです。
つまり、一般的な企業広告主と同様のパワーを有しているとも言えます。
これも繰り返しになりますが、ACジャパンは会員企業の会費によって運営されていますが、その会員はメディアに対する一般的な広告主と代理店、そしてメディアで構成されています。
忖度する必要はありませんが、ACジャパンへの広告差し替えや同団体の広告出稿は、単なる道義的なアピールだけではなく、大量の広告主の声でもあると捉えてもよいのではないでしょうか。
ACジャパンをあなどってはならないと考えます。
●ACジャパンに学ぶこと
不祥事の会見や企業人の失言のリカバリーをはじめ、2024年は数多くのコンプライアンス関連の事件が世間を騒然とさせました。それは元となる企業の取引先や従業員の生活まで脅かす範囲まで波及し、さらに問題を上積みしたことも少なくありません。
こうした事象をキャンペーン等で正そうというのが、ACジャパンの活動です。
2025年は各企業は法令違反に関してはもちろんのこと、著作権等の権利侵害に関してより敏感になっているとよく耳にします。たとえばファンクラブ系のSNSでも、何かの説明のためにプロの楽曲の一部を気軽に引用しないようにとのアナウンスが増えています。
コンプライアンス関連の職種の求人も、かなり増加しています。
コンプライアンスを入念に配慮して仕事する、日々の生活を楽しむことは息苦しいかもしれません。
そういった案件でお悩みをお持ちであれば、PRの力で私たちは積極的に相談に乗りたいと思っています。実際、コンプライアンス関連のご相談は昨年から増加傾向にあり、実績も積み重ねています。
お気軽にお問合せください。