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日経トレンディ2022年ヒット商品に見る、ストーリーの重要性 2022/12/01

今年もあと1か月となりました。1年を締めくくる「ランキングもの」が続々と発表されています。いち早く発表された『日経トレンディ2022年ヒット商品』では1位にヤクルト1000、2位にちいかわがランクイン。いずれもデビューは約3年前と、やや遅咲きの大ブレイクです。
両者とも派手な宣伝活動を行ったわけでもなく、じわりじわりと支持を集め、現在の人気たるや凄まじいものがあります。
『ヒット商品』のツートップがロングセラーものというところに、例年とは違う異色性を感じ、ふたつの超人気物が生まれた経緯をPR的側面から考察してみました。

■大半は一過性で終わるヒット商品。定番化するために必要なのは?
タピオカ茶にしろ、マリトッツオにしろ、ヒット商品たるもの、一時的に爆発的に注目を集めるものの、しばらくすると忘れ去られてしまうのが常。
ところが『日経トレンディ2022年ヒット商品』で1位2位に輝いたのは、いずれもその誕生から約3年も経たものです。

もともとまったく注目されていなかったわけではありませんが、時とともに増殖し続けたファンの口コミを中心にどんどん人気が盛り上がり、トレンド狂騒曲を奏でるまでに至ったのです。

このヤクルト1000とちいかわ、前者は乳酸菌飲料で後者はTwitterで無料配信されている漫画作品です。誕生から約3年で大ブレイクということ以外に共通項はなさそう……と思いきや、両者ともに「ストーリー」がありました!

「ストーリー」といえば、「メディアが報道したくなるようなストーリーが大事」「人に語り継ぎたくなるようなストーリーがあると長く親しまれる」とPR活動の中で非常に重要な要素だと言われます。そのお手本のようなストーリーが、ヤクルト1000とちいかわにはあるのです。
それぞれ検証していきましょう。

■愛飲者の声がストーリーとなって共感が共感を増殖させた、ヤクルト1000
受賞商品の正式名称は正式にはYakult1000(宅配用)/Y1000(店頭売用)ですが、本文ではヤクルト1000と表記します。

ヤクルト1000は、ヤクルト社の乳酸菌飲料のひとつです。「ストレスを緩和し、睡眠の質向上」に効く乳酸菌シロタ株がヤクルトの飲料シリーズの中で最も多く含まれる商品として、2019年に地域限定で発売されました。
ヤクルト社は約90年前から乳酸菌飲料の販売で「健康で楽しい生活づくり」に貢献する……を企業理念に掲げていますが、その商品ラインナップの中でヤクルト1000は最高峰に位置づけられているのです。

この段階で「差別化できる優位性をもった商品」として話題性が生まれます。
ターゲットも明確です。発売開始当初はまだ成熟しきっていなかった「睡眠の質を向上させる健康飲料」の市場に、ヤクルト1000は挑みます。そして、「乳酸菌飲料は子どもや女性が好むもの」というイメージからの脱却です。

ストレスや目覚めの悪さを改善する機能を備えたヤクルト1000は、それらの悩みを払しょくして精力的に活躍する各界のプロフェッショナルをメインターゲットに据えました。
CMには歌手のMISIAさんや音楽プロデューサーの秋元康さん、力士の貴景勝さんに「睡眠が仕事に与える影響」について語ってもらうなど、スペシャリストやビジネスマンが共感するようなアプローチで制作されています。

CMを流したとはいえ栄養飲料のタフマンや飲むヨーグルトシリーズのジョアに比べれば、派手なキャンペーンとは言えません。

広告以上に力を入れたのが、ヤクルトレディと呼ばれる販売員に丁寧な説明をしてもらうことやSNSでインフルエンサーに試飲してもらって体験談を拡散してもらう地道なPR手法でした。

商品に自信があってこその成功への道だったわけですが、そんな口コミメインの施策によって「飲んでみたら劇的に効果があった!」とバズりにバズり、タレントのマツコ デラックスさんや超大物ミュージシャンも実際に愛用するようになったことを番組やSNSでコメントしてくれるようになり、話題の輪はどんどん大きくなっていきます。

睡眠に悩む人々の声へ共感する人々、改善された喜びを語り合う人々によってヤクルト1000のストーリーは千変万化し、現在は1日150万本以上の売上を示すまでになりました。売り切れ続出で転売サイトで高額取引されるなど、さらに新しい現象も生みだしています。

ヤクルト社はヤクルト1000増産を念頭に、工場の移転や機能リニューアルを先ごろ発表しました。何年もの時を経て、「睡眠の質向上」の特効薬的地位を確立したヤクルト1000は、場合によってはヤクルト2000、ヤクルト3000として定番化されていくかもしれません。
https://www.yakult.co.jp/yakult1000/

■共感せずにはいられない、「キャラクターなのに人生がある」ちいかわのストーリー

ちいかわとは、イラストレーターのナガノさんがTwitter上に描き出した、7コマ程度の連載漫画のキャラクターです。
ちいかわは「なんか小さくてかわいいやつ」の略だそうで、ナガノさんによれば「こういう風に自分も暮らしていきたい」というコンセプトのもと、2017年ごろから不定期に発表されています。
ナガノさんの作品は常時複数のキャラクターによる異なる物語をランダムに発表するパターンで、「なんとなく可愛い」「なんとなくクセがある」世界観が人気を集め、LINEのスタンプとしても様々な絵柄がもてはやされています。
特に「ちいかわ」は大好評で、ついに2020年より単独のTwitterアカウントで他のキャラクターよりも頻繁に発表されるようになりました。そして約1年後には講談社から単行本化されるほどブレイクします。
それから先はフジテレビの占いコーナーのキャラクターに採用され、さらに週に一度アニメーションでも放映されるなど、人気はうなぎ上りとなります。

関連グッズが発売されれば即完売、期間限定ショップができると長蛇の列です。

ところが、実際にちいかわを見ると、昔で言えば“ウマ下手”系の手描き風の作品で、既存の商業ベースに乗って誕生したキャラクターに比べると、「何がそんなに可愛いの?」と言う人も少なくありません。
https://twitter.com/ngnchiikawa?utm_campaign=9329769534&utm_campaign=9329769534

しかし!
最初にご紹介したように、ちいかわは単なるキャラクターではなく、「漫画」なので元々ストーリーがあるのです。
しかも、漫画の中でちいかわとその仲間は労働し、労働賃金を増やすために資格試験を受けたり、友だちと助け合ったり、励まし合ったりもします。だまされたり意地悪されることもあります。漫画の世界なので現実にはない不思議なことも起きます。
でも、ちいかわの物語には筋が通っていて、「悪いことをしたりずるく立ち回るとバチが当たる」ストーリーや、善と悪の間で苦しむ姿も描かれ、実社会での人生に照らし合わせたくなるシーンが満載なのです。

テレビでアニメ化されるまではTwitterに触れられる層だけで楽しまれていたちいかわは、いまや性別年齢問わず大人気となったのです。
ちいかわを通して夫婦が仕事の疲れや思いを語りあうシーンも増えているそうです。

単行本化にアニメ化、数々のグッズ販売が続き、さすがにちいかわはそのうち飽きられてしまうのではという声もないわけではありません。
ただ、作者のナガノさんは常時何種類ものキャラクターを生み出し、それらを通してメッセージを発信しつづけている方だけに、万が一ちいかわが乱発されすぎて飽きられてしまう日が来たとしても、心残りはないのではないかと思われます。
そして、また新しいキャラクターが新しいストーリーとともに登場するのではないでしょうか。

ちいかわは、ほぼ個人が趣味のように描き始めてSNSを媒介に話題を集めたキャラクターなので、CMをはじめとする広告は一切なく、ここまで人気を集めました。
逆にちいかわの人気を目当てにコラボレーションした食料品や衣料品などが大ブレイクし、ちいかわは袋麵や人気オンラインゲームのCMにも採用され、認知度を高めています。

当社ではこれまでメディアが取り上げたくなるようなストーリづくりで数多くのPRを成功させてまいりました。ストーリーの構築次第で、新しいPRの切り口がどんどん広がります。ご興味のある方は、お気軽にお問合せください。

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