ゆるキャラブームの終焉と今後の「キャラクターマーケティング」 2020/10/23
全国各地のご当地キャラクターが人気を競う「ゆるキャラグランプリ」。最後の大会が、10月3・4日に岩手県滝沢市で開催されました。東日本大震災で傷を負った日本を元気づけるべく「ゆるキャラ」による地域活性化を掲げて始まったイベントが、一定の役割を終え10年の歴史に幕を下ろしました。
ゆるキャラは、メジャーなキャラクターでなくてもやり方によっては有効に展開できるという「キャラクターマーケティング」の新しい手法を市場に定着させました。代表格のくまもんやふなっしーは幅広くマーチャンダイズされ、CMにまで起用されるなど市場を多いに盛り上げました。
現在はゆるキャラそのものは下火になってしまいましたが、ゆるキャラが定義した新しいキャラクターマーケティングの手法は汎用性が高く、SNSでの拡散も狙いやすいことから、今後もまだまだ応用できそうです。
最近SNS上で話題になったキャラクターマーケティングの事例を2つご紹介します。
① JR大崎駅オリジナルキャラクター「おうさき」
八の字眉と、口が「大」の字になっている困り顔がチャームポイントのウサギのキャラで、その名も「おうさき」。今年9月に駅構内に紹介ポスターを掲示したところ、プロフィール欄に記載された困り顔の理由が「可哀そうすぎる」とTwitterで話題になりました。
「『大崎って何もない』『大崎止まりの山手線はいらない』『他の駅と間違えて降りました』と言われ続け、悲しみから眉が下がってきた」
この「大崎駅不要論」は“山手線利用者あるある“のようで、多数の賛同意見がSNSに投稿されました。ますます「おうさき」の困り顔に拍車がかかり、相乗効果を生み「可哀そう可愛い」「おうさきを幸せにしてあげたい」と好感度を上げる結果につながりました。
② 「テイコウペンギン」の西武鉄道車内広告「おまえら、テレワークしないの?」
ペンギンをモチーフにしたキャラクター「テイコウペンギン」が、電車内の人たちに「おまえら、テレワークしないの?」と問いかける車内広告ステッカー。電車のキャラクターのくせに、切れ味の鋭く通勤で電車を利用している人を鋭く煽りまくっていると、Twitterで話題になりました。
この「テイコウペンギン」、実はブラック企業に勤めるペンギンYouTuberという設定で、ステッカーには小さく「※今日もサービス残業で終電を逃した社畜ペンギン」と記載されており、彼自身もブラック企業勤務ゆえにテレワークできないという皮肉が込められているところがポイントです。テレワークが増えれば鉄道会社の収益が減ることが明白ながら、敢えて電車の車内広告を選んでいる点も、SNSで物議を醸しました。
シンクタンクの矢野経済研究所は、国内のキャラクタービジネスを調査し、「2020年度のキャラクタービジネス市場は新型コロナウイルスの影響により、前年度比95.2%の2兆4,130億円になると予測。コロナ禍によるビジネス機会損失で市場規模は減少する見通しだが、人気キャラクターは変わらず好調であることや外出自粛によってアニメ視聴が増えたという声もあり、中長期的には市場は活発なマーケットを形成していくものと考える」としています(参考:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2470)。
確かに昨今の『鬼滅の刃』の盛り上がりぶりや、ポケモンの息の長さには目を見張るものがあります。
コロナ禍の影響からイベントが減り、ゆるキャラの活躍の場は一段落ついてしまったかもしれませんが、人との触れ合いが難しくなった今こそ、ネットやテレビを介してキャラクターたちが人々を癒し、企業等のメッセージを伝える重要な役割として期待が高まります。
ゆるキャラに代わる、今だからこそのキャラクターマーケティングを考え、PRに活かしていきたいものです。