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PRに刺さるのは、「映え」?「リアリティ」? 2021/06/04

『日本一ふつうでおいしい植野食堂』という番組をご存じでしょうか?
視聴率は不明ですが、BSながら「料理を作るのも食べるのも大好きな男女」の間でこの番組の話題が盛り上がっているそうです。
BSフジで昨年より放映されている帯番組で、雑誌dancyuの植野編集長がさまざまな飲食店を訪れ、ズカズカと厨房に入り込んで手取り足取り看板料理の作り方を教えてもらうという内容。

当初dancyuのタイアップかと思ったのですが、同番組はタイアップ番組を取り上げそうにない『週刊フジテレビ批評』で特集されたり、同局の株主向け報告書に「BSフジの新番組の目玉」として記されたりしているところを見ると、純粋な料理バラエティのようです。
人気の理由は、紹介される料理の美味しそうな映像もさることながら、店のチョイスが庶民的で誰もが気軽に足を伸ばせそうな雰囲気であること、プロの味は画面から十分伝わってくるものの「私にも作れそう」な気分にさせるところだとか。
そして、もうひとつ。超人気料理雑誌の編集長だというのにレポーターとして出演する植野氏の包丁さばきや鍋のあしらいがものすごく不器用で視聴者に親近感を抱かせる点も見逃せないとのこと。しかも、植野氏が料理した皿とシェフの皿とが並んで最後に出てくるのです。口に入れずとも、その味が想像できるほどにリアリティ満点なシーンです。こんな料理番組、確かに見たことがありません。

「インスタ映え」という言葉が生まれたように、コンテンツの人気は注目率の高い画像を用意できるかどうかが左右します。テレビのニュース番組でも、インパクトのある映像を競うように流します。

広報・PR活動には、インスタグラムもテレビもたいせつなメディアですし、そもそも記者や媒体担当者の目を惹くためにプレスリリースに添付する画像には、ひときわ気を配っていることでしょう。
しかし、広報・PR活動は、商材のファンを増やすこと、ターゲットの心をゆり動かすところにあります。インパクトは大事ですが、ただ「映える」だけではどうでしょうか?

『日本一ふつうでおいしい植野食堂』の植野編集長は、「雑誌編集で心掛けているのは、何年も予約がとれないような店は紹介しないということ。そこまで人気がある店は注目率は高いでしょうが、読者にとってリアリティがない。妄想して楽しむのではなく、実際に食べられないと僕らの読者には響かない」と編集方針を聞かれるたびに答えています。

dancyuは写真ひとつにしても「美しく見える角度でも、事実として違和感が感じられるようなアングルから撮影するのはご法度」というほどの徹底ぶりです。

「料理や飲食店情報誌は、編集の視点が客よりも店側に寄りやすいけれど、dancyuはあくまでも“食べる人が主役”。この編集方針を貫いて、読者を集めてきた。リアリティがない“映え”だけの世界は読者が離れていく」とも植野編集長は力説します。
末永く愛される企業の広報・PRには、「映え」だけでなく「リアリティ」も見直してみる必要があるかもしれません。

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