なぜあの企業は、コロナ禍に負けずに業績好調なのか? 2022/03/11
コロナ禍に加え、ロシア×ウクライナ情勢と暗い話題が続きますが、こんな苦しい状況下でも、好調な業績を上げている企業もあります。後学のために、そうした企業の戦略等を見直してみましょう。
■コロナ禍に業績を向上させている市場
医療/衛生用品:
製薬関連やマスク等の医療関連サプライ品の需要拡大のため。
物流・運輸:
在宅や非接触が歓迎され、輸送業に加えて関連した配送用品やトラック市場も。
白物家電:
巣ごもり需要で2021年は白物家電の国内出荷額が過去最高を示す。
ゲーム:
家庭用ゲーム機、オンラインゲームなどが巣ごもり需要拡大で好調。
IT:
オンライン会議ほかコロナ禍を便利に過ごすためのサービス各種開発で多方面に人気。
逆に落ち込んでいるのは飲食業界や旅行関係ですが、日本マクドナルドや日本KFC(ケンタッキーフライドチキン)等、過去最高水準の業績を上げた企業もあります。この両社の成功の要因は随所で語られていますので、以下もっと身近な「コロナ禍にありながら業績を向上させている“あの会社”」について分析してみます。
■コロナ禍に業績が向上した企業の戦略とは?
コロナ禍に業績を向上させた戦略のポイントに注目して、数社事例を上げてみました。
①視点を変えて、既存の商品を新しい環境下で魅力あるものに再編する
事例:アソビュー
レジャー施設やアクティビティなどの遊び予約サイトの運営で2011年に設立以来好調に成長してきたアソビューは、コロナ禍によってインバウンド需要はおろかあらゆる外出が自粛状態となって以来、一時期は倒産寸前にまで追い込まれたそうです。
大幅な業態変更も考えたようですが、「いままで培ったものを活かせないか」と、「外出できないからこそ、外出時の楽しさを届けよう」と模索しました。
その結果「オンラインで届ける、体験教室やバーチャルトリップツアーの運営」そして徹底的に対面を避けた予約システムの開発により「Go toトラベル/イート」のリザベーションサービスを主たる事業に据えたのです。
もちろんそのためには莫大な資金調達が必要でした。レジャーやアクティビティの市場は知り尽くしていても、それらをコロナ対応で便利で楽しく使ってもらうには相応のシステムを開発する必要があったからです。DX推進にも注力しました。
その結果、企業存続どころかコロナ禍前の成長率を取り戻すまでに業績を回復させました。
また、同社は元々交流のあったオイシックスやレッティに協力を仰ぎ、従業員を在籍させたまま他社に出向してもらう人事を決行し、業績に左右されずに雇用を守り続けています。他業種にふれることで社員の視野が広がり、企画の多様性も生んだとのことです。アソビュー株式会社
②コロナ禍で余財となった資源の活用と、ネットを駆使した自社の魅力の発信
事例:泉橋酒造
近隣地区の米を利用して酒造りをする、神奈川県は海老名市の酒蔵・泉橋酒造は、コロナ禍による飲食店休業等により、売上が大幅に落ち込みました。最初の緊急事態宣言発令時は、同社の事業の柱となる「酒の卸」は従来の三分の一の売上となり、「このままでは自社のみならず、米作農家も終わってしまう!」と悲鳴を上げました。
悩みに悩んで酒が売れないことで余財化した米の新しい使い道を検討しました。また、同社は酒造会社としてはいち早くSNSなどに目をつけていたことで、オンラインショップはもとより1万人以上のフォロワーを有するFacebookやYouTubeでさまざまなイベントの企画に力を注ぎます。そんな蓄積がものを言い、巣ごもり中の人々にオンライン酒蔵見学、酒を使った料理教室などでファンをどんどん増やしていきます。
さらに、本来酒米は酒造り以外には味が薄くて独特の粘りがあるため、別の料理に転用が効かないのですが、料理家の協力も仰いで味の濃いリゾットやケーキ、ピザを次々と開発していきます。それらをコロナ禍で給食等の材料不足の悩みが増えた神奈川県内の幼稚園や保育園に提供し、話題の輪を拡大します。
ノンアルコールの麹ほか、酒蔵でありながら非アルコール製品にも積極的に進出し、コロナ禍以前は縁のなかった未成年市場にも領域を広げて、売上を立て直しているそうです。泉橋酒造株式会社
③救世主は品質とインフルエンサー
事例:小杉織物
福井県坂井市の帯を中心とした織物を製造・販売する小杉織物は、本来ならば同社の主力商品である浴衣や帯などが売れる花火大会などが次々と中止となり、注文がゼロになる日もあるほどに打撃を受けていました。そこで、自社の着物や和装小物の製作時に出た端切れなどを利用したマスクを新たな商品ラインナップに加えました。
規模的に1日50枚が限界という生産能力で、しかも使い心地を重視して、素材は絹で1点2,000円前後と、マスクとしては高級品です。
それが、2020年7月半ば以降、問い合わせが殺到し、なんと1日8,000枚の生産でやっと追いつくほどの注文が入る事態となりました。
原因は、天才棋士として誉高い藤井聡太五冠(2022年3月現在)が初タイトル獲得時に小杉織物のマスクを着用したことでした。「史上最年少でタイトル!」のニュースとともにテレビや新聞、ネットのニュースで藤井棋士の顔がアップで大きく露出し、マスクまで注目され、試合後1週間で5万枚も注文が届き、累計20万枚もの生産となっているそうです。
小杉織物が藤井五冠に商品を贈る等の行為はいっさいなく「なぜ大事な一局で着用してくださったか最初は不思議なほどで、その後将棋の録画を何時間も研究して長時間マスクをつけていても不快感がないよう、改善を重ねました」と同社代表は語っています。
マスクはすでに小杉織物の売上の一角をなすまでになっています。
改めてインフルエンサーパワーの凄まじさを感じるエピソードではありませんか?もちろん、品質あってのことですが。小杉織物株式会社
④商品の魅力はストーリーで倍増
事例:石屋製菓
「白い恋人たち」で有名な石屋製菓も、コロナ禍によるお土産需要の激減等により、2021年度は50億円規模の大赤字となるほどの低迷期を迎えます。毎年70万人も来場者のあった工場見学施設をはじめ、販売店や製造工場が続々と休業し、数多くの社員が自宅待機せざるを得なかった時期もありました。
そんな折、「単なる自宅待機ではもったいない」と、その期間を研修に使おうという企画が持ち上がりました。
約半年ずつ、道内でつながりのある農家や酪農家に社員を研修として向かわせ、それらの模様をInstagramで情報発信することにしたのです。100人単位の社員が毎年参加し、この研修は、業績が回復した現在でも続いています。
この施策は同社のCSR活動にもつながりましたし、企業の新しい側面を社会に知ってもらう糸口にもなりました。また、社員も研修によって牛などへの餌づくり、餌やり、牛舎の掃除、さらには食品廃棄の現実を知るなど、日常では学べない多くの財産を得たのです。
廃棄予定だった生乳を利用したホワイトロールケーキという大ヒット商品を生み出す等、業績改善に貢献するような成果もしっかり上げています。
石屋製菓の成功は、業績が振るわなくなったときに「研修」という軸から紡がれるであろうストーリーがあり、それを伝達する経路を用意し、さらに副産物として誕生した新商品にもその物語を織り込んだところにあるのではないでしょうか。石屋製菓株式会社
おまけ 人気MCコロナ感染中に視聴率が上がったのは、告知力!?
事例:朝のバラエティ番組・ラヴィット!
最後に、これまでのエピソードからは少々流れが変わりますが、コロナ感染者増加により企業の中でも中心人物が不在となった「災い」を転じて「福」となしたお話し。
企業内でも責任者の感染で事業に支障を来すこと、多々起きていると思われますが、それは芸能界でも同様。たとえば週に5日もOAされる朝のバラエティ番組でMCが感染という事態に! ところがそれを機に視聴率が上がったというから聞き捨てなりません。
日本でいちばん明るい朝番組と銘打つ『ラヴィット!』(TBS系)が、MCの川島明さん(麒麟)がコロナ感染で今年2月、約1週間お休みとなってしまったのです。ところが、彼が休業初日早々0.2ポイントながら視聴率がアップしたではありませんか!
初回の代打MCはお笑いコンビ・アインシュタインの河井ゆずるさん。同コンビでは比較的地味に立ち回る芸風の方です。代打MCとして平均点以上の立ち回りをして番組をまわしたことが高評価だっただけではなく、代打が誰なのかOA直前まで明かされず、毎日「次回は誰?」でSNSを中心に話題になったことが高視聴率の原因にもなったと思われます。
しかも、『ラヴィット!』の前に毎日OAされる報道番組『THE TIME,』で名司会者安住伸一郎さんが実に上手に、ほんとうに数秒間、「今日の代打は誰?」を視聴者に問いかけるという「朝ドラ送り」並みにチャンネルを変えられない告知ワザを展開してくれたのです。
プレスリリースしかり、情報は告知次第で威力が変わることを痛感した『ラヴィット!』のMC代打劇でした。
当社でも、コロナ禍においてもPRの力で企業の皆様とともに逆境を盛り返していきたいと考えております。お気軽にお問合せください。