都知事選に学ぶ、PRコミュニケーション 2020/06/29
7月5日は都知事選投票日で、街頭では舌戦が繰り広げられています。
今年は、コロナ禍で握手なし、聴衆者から距離を置いての演説、さらに小池百合子現職候補のようにオンラインのみの選挙活動という具合に、例年とは違う様相を呈してもいます。
選挙運動は、候補者が自らの主張をアピールし、その存在を認知してもらい、共感者を増やすために行います。つまり、PRそのもの。英語で選挙運動のことをキャンペーンと言うが如しです。
それなりの資金を投じて、大志を抱いて立候補するわけですから、選挙運動にはどの立候補者も必死で取り組みます。それがゆえに、「やりすぎ」「逆効果」な戦略も少なくありません。とんでもなく奇抜な姿で政権放送に臨む候補者、公序良俗ギリギリの写真を選挙ポスターにする候補者等、枚挙に暇がないほど奇天烈な選挙運動ぶりが、毎回話題をさらいます。
「とんでもないPR活動」の例として肝に銘じて彼らを見守りましょう。
先述したような突飛な行動ではないものの、選挙運動のあり方を見て反面教師と感じた例は街中でいくつでも見かけます。
たとえば……
1)誰が立候補者だかわからない街頭演説。
政党カラーを表す同じ色のユニフォームで10人前後の人々が立候補者の名前と顔写真を掲げたのぼり旗を持って練り歩いていましたが、立候補者も応援の人々も同じ服装にマスクだったので、肝心の立候補者が紛れてしまっていました。
2)実現する方法が理解できないスローガン。
これは「税金をゼロにします」という類の方針を前面に押し出したものの、その根拠や方法論が見えて来ず、懐疑心を煽るだけになりがちな施策です。裏付けなきアドバルーンを上げまくるPRのようなものでしょう。
3)見出しがなくて、何を言いたいのかわからない宣伝用のビラ。
よく読むと素晴らしい方針がしたためられていたとしても、何が言いたいのか明確でないビラは大半がゴミ箱行きです。見出しが曖昧なプレスリリースに似ています。
4)聴衆者のプロフィールを考慮しない演説。
子育て世代がほとんどいない街で、待機児童の話を熱く語っても、老人がほとんどいない街で介護問題を力説しても、効果がないことは自明です。TPOを考えないアプローチはコミュニケーションを生み出せません。お菓子屋さんの前でお酒の宣伝をするようなものです。
逆に「PR活動のお手本」のような戦術で動く候補者も数多くいます。こちらも見逃さずに学びたいもの。
オンラインにしろ街中にしろ、選挙ほど人のアピール方法を目の当たりにできる機会はそうそうありません。奇天烈に見えるアプローチも「なぜあのような所作に出たのか」を考えていくと、いろいろな新しい発見があるかもしれません。